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未来ビジョンで他流試合/9社30人超が参加。「シグナルカード」で「未来」を探る。
「CROSS Business Producers」が開発した企業戦略開発プロセス「未来ビジョン」を体験するための「他流試合セッション」が2016年3月10日、都内虎の門の発明会館ホールで開かれました。
セッションには、カルビー、KDDI、KDDI研究所、SUMCO、JTB、パナソニック、富士通、三井住友海上、河北新報社の9社から30人を超える参加があり、「未来ビジョン」の基礎的な概念や手法を理解しながら、2045年を目標としたビジョンづくりを体感しました。
「未来ビジョン」のプロセスは「シグナル」「フォーキャスト」「アクション」の3つに分かれます。
ニュースや統計データの収集・分析を通じて「今、何が起きているか」を把握するのが「シグナル」。
「シグナル」分析を必要に応じて何度も繰り返しながら「シグナル」の精度を高め、そこから読み取れる未来の社会の形を浮き彫りにし、予測するプロセスが「フォーキャスト」です。
「フォーキャスト」で浮き彫りになる予測の精度を高めながら「未来ビジョン」の作成に必要な考え方や段取りを具体的に練り上げるのが「アクション」のプロセスです。
「未来ビジョン」のプロセスのうち第一段階の「シグナル」を体験するのがこの日の狙いで、冒頭、参加者自身が事前に作成した「シグナルカード」について説明し合いました。
持ち寄ったシグナルカードの内容をテーブルの全員で共有したうえで、カテゴリーと時間の二つの軸で並べながら、議論の全体像を少しずつまとめていきました。
その作業を通じて、参加者はどんな「未来」を想定したいのか、未来を支えるための事業やマーケットの姿、技術やサービスの可能性など、「未来ビジョン」づくりの前提となるポイントが徐々に明確になっていきました。
最後に「シグナルカード」の分析や整理の経過についてテーブルごとに発表しました。
参加者にとって「未来ビジョン」の最も特徴的なのは、「シグナルカード」を事前に準備することが宿題になる点です。
参加者が日常の業務の傍ら作成する「シグナルカード」には当然のことながら「偏り」や過不足が考えられます。
「シグナルカード」は「未来ビジョン」に向かう議論や思考プロセスの基礎になる重要なものです。
第一段階の「シグナル」から「フォーキャスト」「アクション」と段階を踏むためには、「シグナルカード」の収集と分析・整理を、より充実させる必要があります。
「未来ビジョン」の基礎を少しでも高いレベルに引き上げるため、CROSSは外部のリサーチャーにも依頼して広範な分野をカバーし得る膨大な量の「シグナルカード」を常時、整備しています。
この日の「他流試合」でも、参加者が事前に準備した「シグナルカード」に加え、セッションの顔ぶれやテーマに合わせて、あらかじめ抽出したCROSSの「シグナルカード」を参照しながら議論を進めていました。
「CROSS Business Producers」代表取締役の三木言葉さんは「未来ビジョンはあくまで事業創造を目標としています。
事業の内容や規模にもよりますが、事業企画や方向性を本格的に決めるには、最低でも2日ぐらい必要です。
ただ、今回は、いろいろな業種の方々が話し合い、情報を共有し、みんなで目標に向かう楽しさを感じてもらえたのではないでしょうか。
なぜ、わたしたちは仕事をしているのでしょう。
自分たちが見たい未来はどういう未来なのか、自分が仕事に取り組むことが人々の幸せにどうつながっていくのかを共有できればうれしい」と話しています。
▽ ▽
「未来ビジョン」づくりの現場を取材したのは2015年2月に続いて今回が2回目です。
今回は「アドバイザー」の役割をいただいて、準備段階の議論にも一部参加しました。
自分を育ててくれた新聞業界、特に地方新聞社はデジタル化への対応に苦戦しています。
その苦戦ぶりを長い間、肌で感じながら、ピンチをチャンスに変える方法がないものかと模索してきました。
「新聞」と「デジタル」の距離は離れていると思われがちですが、そう思わせる要因の多くは技術で克服可能です。
致命的なのは、企業の戦略や事業開発を担う人たち自身の心の奥に巣食う「距離」といっていいでしょう。
新聞社のさまざまな業務分野を担う人たち自身が主役となる以外に、この困難を乗り切る道はありません。
「CROSS Business Producers」が米国生まれの「未来ビジョン」の日本化に挑戦しているのを知ったのは3年ほど前でしょうか。
以来、強い関心を抱いて現在に至っています。
「未来ビジョン」を支える理念や手法に引かれるのは、苦難に向き合っている組織や団体のメンバーが自ら「未来」をつかみとるプロセスに見えるからです。
問題設定から解決に向かうための方向性の検討、新たな目標づくりまで、外部のシンクタンク等に丸投げするのではなく、当事者自らが汗をかきながらつかみとる想定は、一見、困難な道に見えるかもしれませんが、特に地方新聞社が地域と向き合いながら、独創的で多様な戦略を開発する環境につながるものと確信しています。
写真はいずれも「未来ビジョン 他流試合セッション」の会場
アドバイザー 佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)
2015.2.17
KDDI×富士通 ビジョン2025策定(公開セッション)
富士通、KDDIの社員のみなさんとCROSSの専門スタッフが2025年の「未来ビジョン」づくりに挑戦する「ビジョン2025 合同セッション」を2015年2月4日、都内で開きました。CROSSが開発した「未来ビジョンプログラム」に基づいて、中期、長期の未来予測を組織や業種の壁を超えて行う取り組みです。CROSSのパートナーである株式会社ウォーターデザイン代表取締役社長の坂井直樹さんもアドバイザーとして参加しました。
この日の参加者は、企画・開発、営業などさまざまな部門で第一線に立つ50人。5つのテーブルに分かれ、短時間で、濃密な議論を進めました。最初にCROSS社内で実際に作成した「未来ビジョン」をモデルに、「未来」を考えるうえで心掛けたいポイントや作業の段取りについて説明しました。CROSSの専門スタッフも議論に参加しながら適宜サポートしました。
参加者には、あらかじめ未来予測に関する資料を収集(ファクト情報の収集)することをお願いしてありました。
セッションでは初めに持ち寄った資料を説明し合い、大量の「ファクト情報」を分類・整理しながら未来予測に必要な「シグナル(Signal)」を読み取りました。(ファクト情報のレビュー)
続いて「シグナル」から導き出されるコンセプトを絞り込み、2025年時点で、どんな世の中になるかについて「フォーキャスト(forecast:予測)」として固めていきました。(見通しビジョンのとりまとめ)
セッションを通じて5つのチームが到達したポイントは以下の通りです。
【Aチーム】
●フォーキャスト:「二極化」と「多様化」が進展する。
●説明:オートメーション化が進む一方、それとは逆に、実際に自分で体験するといった、人間らしさに新しい価値を見出すような社会になる。「二極化」と「多様化」との間の領域が大事。「間」というのは居心地がいいこともあって、そこから新しい価値が生まれ、「多極化」へとつながっていく。
オートメーションの流れが強まる中で、人間としての不安感がどうしても募る。人間らしさが大事になるのではないか。デジタルかアナログかで言えば、デジタル化に伴う不安感に対してアナログの人間らしさに関心が集まる。
ビッグデータやオートメーションの分野ははどんどん価格競争になっていって、最終的には人間らしさに注目したビジネスが生まれる。
もちろん、技術を全部、否定するのではない。感覚で伝わるロボット技術、体の不自由な人が手を動かせるようになるような「人に情報を与える技術」にフォーカスしていくと、面白い世の中になるのではないか。
【Bチーム】
●フォーキャスト:根本的な、生活を満たすための欲求が高まるとともに、それ以上の生活の質を目指す部分では多様性が求められる社会になってくる。
●説明:モビリティの自動化、パワードスーツへの関心など、多様性への欲求が高まる。一方、根源的な部分で、食料、遺伝子、安全に対する危機感が高まり、より注目を集める分野になるのではないか。
2015年(現在)でも、根本的な問題に対する関心は存在するが、特に先進国では、どうしても解決が必要な問題として。注目されているとはいえない。2025年になると、高齢化、人口増加の問題もあり、その点が深刻になり、解決しなければならない問題として強く意識されるようになる。
【Cチーム】
●フォーキャスト:「新しい集約」をみんなが意識する時代になる。
●説明:ウェアラブル、医療の変化、エネルギーの問題などの分野で、すべてが高機能になっていく。それは「数値化」がどんどん進行することを意味するが、「数値化」が進むと、さまざまな「違い」「ボーダー」がはっきり見えるようになる。その結果として「新しいボーダー」をみんなが意識し、次の「新しい集約」に向かうようになる。たとえば「ホームレス」を「新しいボーダー」からみると、「新しい集約」に向かって人が動いていることを意味するともいえる。
また、高品質であっても、使う人が少ないシステムは絶対に成り立たない。「新しい集約」を目指すには、低コスト化、コンパクト化で、みんなが幸せになる方向を見つける必要がある。「新しい集約」を単にコストで考えると、不安な社会、怖い未来になる可能性もある。また、集約されることで、多様性のないコミュニティーになるとしたら、それは面白くない。逆に、みんなが集まることによって新しい価値が生み出されることもある。それなら多様でハッピーな社会になるのではないか。
オープンソースを利用してみんなが個人事業主となるような方向性がちょっと前から出ているが、実際は、高コストで、うまく回っていない面がある。なるべく共有できるものは共有できた方がいいという方向性が出来上がりつつある。そういう方向性が普通の生活の中でも、出てくるのではないか。
【Dチーム】
●フォーキャスト:五感コミュニケーションが発達する。リアルとバーチャルの境目がなくなる。スマートハウス、未来の家が実現することによって「家にいながらなんでもできる社会」になる。
●説明:
①五感コミュニケーション
SNSがはやることによって、フェイス・トゥ・フェースのコミュニケーションがどんどん少なくなっている。脳のインターフェース技術が発達して、ヘッドフォンがあれば海外の人とコミュニケーションがとれるような「五感コミュニケーション」の時代となるだろう。
②リアルとバーチャルの境目がなくなる。
3Dプリンタで自宅で食品が作れるようになる。サプリメントひとつですべての栄養がとれる。それでは面白くないので、脳に働き掛けることによって、その人はとってはハンバーグを食べているように思えるような方向が可能になる。
③「空中農園」「家にいるのに外でランニングしているように感じる」というような「家の中でなんでもできる」社会になる。
さまざまな制約がなくなることで、いろんなことができるようになる。残るのは「宇宙への憧れ」だ。今、は難しいけれども、いろいろな制約がなくなったときに、誰でも宇宙に行きたくなる。宇宙産業に今後のポイントがある。
【Eチーム】
●フォーキャスト:「アンチ少子高齢化・一極集中」が実現し「おいしく楽しい食生活」を送れる世の中になる。
●説明:
少子高齢化の進展、都市への一極集中という課題がさまざま見えているが、ロボットやIT技術の活用、脳科学を応用した技術の開発などによって、遠隔操作が可能になる。たとえば体力的に劣る人でも農作業ができるように、どこでも誰でも仕事ができる世の中になるのではないか。
「どこでも仕事ができる」環境の実現は、都市への一極集中から分散に転じる重要な要素だ。自分の趣味が仕事になる環境も実現するとすれば、これまでの「ワーク・ライフ・バランス」から「ワーク・ライフ・インテグレーション(仕事と人生の統合)」に結びつくのではないか。
この問題さえうまく解決できれば、2025年の、さらにその先も明るい未来になり、人間として最も重要な「おいしく楽しい食生活」が期待できる。ドリンクでの栄養補給ではなく、人間としてのプリミティブな要求である、実際のものを食べて楽しむ暮らしが残る。
◎ 価値観と課題を共有/CROSSの未来ビジョンプログラム
CROSSは、米国の未来予測シンクタンク「Institute For The Future(IFTF)」と提携して開発した「未来ビジョンプログラム」をご提供することで、企業イノベーションを目指す企業を多角的にサポートします。
規模が大きくなればなるほど、組織や事業の変革には大きなエネルギーを要します。特にグローバル化が進み、企業環境が複雑さを増す中で、企業を取り巻く課題を共有し、解決手法を開発することが、未来ビジョンを確実なものにするための重要なステップとなります。今回の合同セッションでは、2025年、2050年を想定しました。未来ビジョンの策定につなげるためには事業に参画するメンバー、一人ひとりの個性を把握し、価値観と課題を共有することが何よりも重要です。
「未来ビジョンプログラム」では、この日行った「シグナル」「フォーキャスト」に加え、施策や実践を具体的に考える「アクション(action)」のステップを準備しています。課題を解決するための有効なビジネスプランを策定し、事業成果を達成するまで「シグナル」「フォーキャスト」「アクション」を繰り返し、精度をしっかり高めていきます。スタッフの意識やスキルの向上と人事制度・組織的な変革の双方を進めることを通じて、企業イノベーションの創造プロセスを実感していただくことが可能です。
投稿者 佐藤和文(ジャーナリスト)